
垂直農場は、光の棚をラック状に積み上げることで、床面積を積層可能なキャノピーに変える。したがって照明設計の問題は二次元的である。各棚段のPPFDと、棚段間の垂直間隔を設定し、空中の空間も光子も無駄にせずに作物を予定どおりに仕上げる必要がある。本記事では棚段間隔、層ごとのPPFD、ラックレイアウトを計算例とともに扱う。垂直農場向け業界ページには計画手法の全体を示している。
棚段間隔は処理能力と光のトレードオフ
棚段を1段増やすごとに、床上1メートルあたりのキャノピー面積は増えるが、作物の高さに充てられたはずの垂直空間を奪い、下の棚段に対する灯具の取付高さを固定してしまう。間隔を詰めれば取付高さは低くなり、器具あたりの照射面積も小さくなる。間隔を広げれば器具を高く設置して広い面積を照らせるが、段数は減る。最適点は、作物の高さ、目標PPFD、不動産コストのバランスで決まる。
| 棚段間隔 | 3 mあたりの段数 | 取付高さ | 一般的なトレードオフ |
|---|---|---|---|
| 0.40 m | ~6 | 0.30 m | 段数が多いが作物の高さは限られる |
| 0.50 m | ~5 | 0.40 m | バランス型 |
| 0.60 m | ~4 | 0.50 m | 段数は減るが作物の空間は広い |
層ごとのPPFDと均一性
各棚段は事実上、それぞれが小さな屋内農場である。したがって同じ原則が当てはまる。作物から目標PPFDを設定し、変動係数を低く抑えるよう器具をオーバーラップさせ、キャノピー高さで測定する。棚段が近接しているため、下段に対する器具の発熱が問題になる。光の棚と作物は同じ薄い空気層を共有するので、熱設計と気流は照明計画の一部であり、後回しにする事項ではない。
垂直農場はN個の小農場を積み重ねたもの
各棚段には、それぞれのPPFD目標、それぞれの均一性確認、それぞれの熱管理が必要である。「農場」を1つの塊として設計すると、第1段と第5段で温度や気流が異なり得るという事実が見えなくなる。棚段ごとに計画すること。
計算例
5段のラックを考える。各段は2 m × 1 m(2 m²)、葉菜類の目標250 µmol/m²/s、汎用器具はキャノピー高さで900 µmol/s、均一性係数0.85とする。
| 範囲 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 1段の必要量 | 250 × 2 | 500 µmol/s |
| 1段あたりの器具数 | 500 ÷ 900 ÷ 0.85 | 0.65 → 1に切り上げ(最小) |
| ラック(5段) | 1 × 5 | 器具5台 |
| ラック全体のキャノピー | 2 × 5 | 合計10 m² |
これは試算である。実際の設計では、器具を棚段ごとにグリッド上に配置し、CVを確認する。同じ器具数算定の考え方は屋内栽培のレイアウト記事にも示している。
計算例:葉菜類向け5層ラックの間隔設計
この例は例示である。目標PPFD 220 umol/m2/s、明期18時間でレタスを栽培する垂直ラックを考える。各層は1.2 m x 3.0 mのトレイ(3.6 m2)を保持する。器具は600 mmバーで、各320 PPFとする。
- ステップ1 — 層あたりの必要PPF:220 x 3.6 x 1.15(均一性)= 911 umol/s。
- ステップ2 — 層あたりのバー本数:911 / 320 = 2.8、切り上げて3本。3.0 mのトレイに長さ1 mあたり1本で収まる。
- ステップ3 — 層あたりのDLI:220 x 18 x 0.0036 = 14.3 mol/m2/day。一般的なレタスの帯の範囲内である。
- ステップ4 — 2.6 umol/Jでの層あたりの電気負荷:3 x (320 / 2.6) = 369 W。5層ラックはドライバとHVACを除いて1列あたり約1.85 kWを消費する。
- ステップ5 — 垂直間隔:器具面と作物キャノピーの間に0.35-0.45 mを確保し、成熟した結球がバーに当たらないようにする。アクセス用に0.5 m以上の保守クリアランスを保つ。
- ステップ6 — 総高さの確認:作物層5段をおよそ0.75-0.85 mピッチで積み、構造体と保守空間を加えると、公称4.5-5.0 mの有効高さの部屋に収まる。
実際の建物で拘束条件になるのは、光ではなく有効高さであることが多い。層数を決める前に、実際の有効高さを測り、構造体、スプリンクラーのクリアランス、保守アクセスの分を差し引き、残りを説明可能な作物ピッチで割ること。対応できない部屋に6層目を追加するのは、最適化ではなく設計の失敗である。
気流、熱、層の積み重ね
各層はその上の層の熱を閉じ込め、空気は積層の各高さで異なる動きをする。気流を部屋単位ではなく層単位で設計しなければ、下層ではキャノピー内温度が室温設定値より数度上振れし得る。通常の対策は、層ごとの水平循環ファンまたはダクト給気であり、量子センサーは複数の層に設置して、制御判断が平均値ではなく最も条件の悪い層を反映するようにすべきである。層ごとに温度とPARのセンサーを併設すれば、こうした相互作用は不意打ちではなく可視化されたデータになる。
購入前に確認すべき質問
- 器具の寸法と取付システムは、トレイのピッチに適合し、作物の生育に応じて工具なしで高さ調整できるか。
- PPFはバーあたりかモジュールあたりか、またどの駆動電流と配置の前提による値か。
- 器具の表面温度はどれくらいか、運用で使うトレイ材や包装材にとって安全か。
- サプライヤーは、器具数のみでなく、予測均一性を含む層ごとの配置図を提供できるか。
- 湿潤な室内の高所に設置する器具について、スペア部品とドライバ交換の方針はどうなっているか。
垂直ラック照明設計でよくある誤り
垂直ラックはあらゆる設計判断を層数倍するため、誤りも複合する。繰り返し現れるのは次のものだ。
- 建築上の有効高さで設計し、設備を含めた有効高さで設計しない。スプリンクラー、ダクト、ケーブルトレイで部屋は1段分低くなる。
- 層ごとに作物の成熟度が異なるのに、すべての層で同じ器具を選ぶ。育苗層と仕上げ層では適切な取付距離が異なる。
- 空の状態で均一性を確認し、トレイ、ガター、成熟したキャノピーを設置した状態で確認しない。意味を持つのは後者の形状だけである。
- 気流を層単位ではなく部屋単位で計画するため、下層は高温多湿になり、壁の制御センサーは快適と報告する。
- 稼働中のトレイ上に設置した器具の保守方針がない。清掃やドライバ交換が作物を乱す作業になる。
- 電気設備を器具数だけに合わせ、調光プロファイル、再起動時の挙動、将来の層追加を考慮しない。
積層室のセンシングと制御
層ごとの計測
積層室は1つの柱の中に複数の気候を持つ。層ごとのPARと温度の計測(少なくとも上層、中层、下層)は、部屋に1つのセンサーでは平均化されて消えてしまう勾配を可視化する。層ごとのデータがあれば、調光は層ごとの判断になる。最も熱いドライバの下の層は、涼しい隅の層とは少し異なるスケジュールで運転でき、データがその調整を裏づける。それがなければ、部屋はどの作物も実際には経験しない平均条件で運転される。
変化に備えた設計
垂直農場は建物よりも速く作物を変える。工具なしで高さ調整できる取付システム、変更されたトレイレイアウトに届く電源ドロップ、複数の作物ファミリーをカバーする分光分布を持つ器具は、いずれも少額の追加費用で柔軟性を買うことになる。見積を比較する際は、最初の作期だけでなく2回目の作期のコストも見積もること。レタスにもバジルやハーブにも手戻りなく対応できるプラットフォームは、通常、効率2パーセントの差より価値が高い。
| 層 | 作物ステージ | 目標PPFD (umol/m2/s) | 明期 (h) | 気流確認 |
|---|---|---|---|---|
| 第1段(最上段) | 仕上げ | 230 | 18 | 給気ダクト出口を確認 |
| 第2段 | 仕上げ | 230 | 18 | ファン2を確認 |
| 第3段 | 中間期 | 220 | 18 | ファン3を確認 |
| 第4段 | 育苗 | 180 | 18 | 調光ゾーンを確認 |
| 第5段(最下段) | 発芽 | 90 | 18 | ドライバ下の温度上昇を確認 |
検証可能な参考文献
よくある質問
何段まで積めるか+
天井高、作物の高さ、熱による。段数を増やすほど床あたりのキャノピーは増えるが、間隔は詰まり冷却は厳しくなる。農場単位ではなく棚段単位で設計すること。
各棚段に同じPPFDが必要か+
同じ作物と同じステージなら通常は必要である。棚段ごとにステージが異なる場合は、棚段ごとに設定し記録すること。
棚段を冷やすにはどうするか+
棚間の気流、放射熱の少ない器具の選定、熱モデリングによる。光と作物の間の薄い空隙が、熱を第一級の設計入力にする。
垂直農場では均一性の重要度は低いのか+
いいえ、むしろ高い。棚段は密で、小さな誤差がすべての棚で繰り返されるためである。棚段ごとに低いCVを目標とすること。
棚段ごとに異なる器具が必要か+
必ずしも必要ではない。間隔とPPFDが合えば、同じ高効率バーをすべての棚段に使える。レイアウトが棚ごとに繰り返されるだけである。
設計をどう検証するか+
各棚段のキャノピー高さでグリッド上でPPFDを測定し、棚段ごとに平均とCVを算出して目標と比較する。
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