
温室のLED補光は、自然が供給する光と作物が必要とする光の差を埋めるために存在する。冬季、曇天時、高緯度地域では、自然DLIが作物の目標を大きく下回ることがあり、そこに補光の存在意義がある。問われるのは「光を補うか」という抽象的な話ではなく、「この産地のこの作物について、その特定の差を埋めるために、どれだけを、いつ補うか」である。本稿では意思決定と補光量の算定を扱う。計画手法の全体は温室の業界ページを参照されたい。
自然光の不足量から始める
補光量を決める唯一の数値は不足量、すなわち目標DLIから温室が既に供給しているDLIを引いた値である。自然DLIは産地、季節、構造(被覆材、遮光、方位)によって大きく変動するため、最初の一歩は仮定ではなく実測またはモデル化である。不足量が判明すれば、補光は光周期中にその残りを供給するように設計する。
| 自然DLI | 不足量 | 必要補光PPFD |
|---|---|---|
| 10 mol/m²/day | 10 | 154 µmol/m²/s |
| 14 mol/m²/day | 6 | 93 µmol/m²/s |
| 17 mol/m²/day | 3 | 46 µmol/m²/s |
| 20 mol/m²/day | 0 | 0(補光不要) |
補光が回収に至る条件
補光が最も正当化されるのは、作物が光に対して明確な経済反応を示す場合である。収穫の前倒し、等級の向上、あるいは価格の立つ周年生産である。高単価のつる性作物、イチゴ、切り花は代表的な候補である。夏季や日照に恵まれた緯度では年間の多くで不足量がほぼゼロになるため、調光可能でデマンド連動のシステムであれば、自然光が既に足りている時間にエネルギーを消費せずに済む。
二つの誤り:不足と過剰
補光が不足すれば、制御系に既に投資したうえで不足量が残る。過剰ならエネルギーを浪費し、作物の過熱や過照射を招き得る。実測した不足量に合わせて設計し、調光可能とし、季節ごとに再確認すること。
トップ照明と構造体
温室の補光の大半は、構造体やトラスに取り付けてキャノピー上方から照射するトップ照明である。もう一つの選択肢である列間照明(インターライティング)は別稿で扱う。トップ照明では、屋内レイアウトと同じ均一性と間隔の論理が当てはまるが、むらのある自然光に重ねる形になるため、構造体の影を含めたレイアウトモデルを作る価値がある。
- 産地と季節ごとに自然DLIを実測またはモデル化する。
- 普及指導資料から作物の目標DLIを設定する。
- 補光PPFDは切りの良い数値ではなく不足量に合わせて設計する。
- 浪費を避けるため調光可能かつ季節対応とする。
- 仕様書だけでなくキャノピー内の実測で検証する。
参考文献
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 自然DLIが既に目標を満たす | 補光しない。システムを待機させる |
| 不足量が小さく季節的 | 調光可能な補完運転、季節対応 |
| 冬季の不足量が大きい | 補光PPFDを全量設計する |
| 高単価作物で等級が重要 | 差の解消を優先する |
計算例:温室に実際どれだけの補光が必要か
以下は例示的な計算であり、日射データは自社の現地数値に置き換える必要がある。温帯の冬季気候にある500 m2 のトマト区画が、12月に平均8 mol/m2/day の日射DLIを受け、当該作物の計画目標が20 mol/m2/day であると仮定する。差は12 mol/m2/day であり、これをLEDで供給する。
- ステップ1——DLIの差を器具出力に換算する。16時間運転の場合、必要PPFD = 12 / (16 x 0.0036) = 208 umol/m2/s。
- ステップ2——均一性を見込んでキャノピー面積に対して設計する。208 x 500 x 1.2 = 124800 umol/s の必要PPF(日向と日陰が混在する条件では均一係数が大きめになるのが一般的)。
- ステップ3——PPF 2000 のトップ照明器具では、台数 = 124800 / 2000 = 62.4。グリッドが整うよう64台に切り上げる。
- ステップ4——2.6 umol/J での電気負荷:64 x 769 W = 約49 kW。受電容量、および電力需要制限時に温室がこの負荷を遮断できるかを確認する。
- ステップ5——年間の各月について同じ計算を行う。必要台数は通常3月には大きく減る。季節調光とスケジューリングが、台数だけよりも重要となる理由はここにある。
この演習の要点は月別プロファイルにある。最も暗い週に合わせて設計し、年間を通して全器具を全出力で運転するのは、取り得る選択肢の中で最も高コストな答えである。最も暗い月に合わせて設計し、残余の期間を調光する方が通常は安価で、同じDLIを供給できる。
制御:計画と請求書を分けるもの
日射連動の制御ロジック
補光は時計ではなく太陽に反応すべきである。標準的な手法はキャノピー高さのPARセンサを用いる。日射PPFDが日次目標の達成に必要な水準を下回る間だけ器具を運転し、コントローラが積算DLIを追跡して目標到達後に消灯する。積算DLIの追跡がなければ、晴天の後に夜間スケジュールが実行され、作物がもはや必要としないエネルギーをそのまま浪費する。
時間帯別料金とデマンド料金
電気料金が時間帯で変動する場合、作物の光周期を守りつつ、補光を可能な限りオフピーク時間帯へ移す。デマンド料金も重要である。器具の起動をブロック単位でずらせば単一のデマンドピークを避けられ、瞬時PPFDをわずかに下げて負荷プロファイルを平準化する栽培者もいる。いずれの戦略も器具台数を変えずに経済性を変える。
購入前に確認すべき質問
- 器具は温室の湿度、水のかかり、構造体の温度範囲に対応した定格か。
- IP保護等級と腐食防止はどの程度か。温室環境において保証が除外する範囲は何か。
- 器具またはコントローラはPARセンサ入力と積算DLI制御に対応するか。それとも別途購入が必要か。
- 器具の重量と取付方式はどうか。構造体は追加荷重に耐える定格か。
- 中間期に調光でき、同一の設備で全季節を賄えるか。
補光でよくある誤り
温室の補光プロジェクトは予測可能な形で失敗する。以下は繰り返し見られる事例である。
- 月別データではなく年平均日射で設計するため、冬季には不足し、それ以外の期間は過剰になる。
- PARセンサなしの時計制御のため、晴朗な午前中も器具が運転し、作物が不要とした電力費を消費する。
- デマンド料金の失念:全器具が同時に起動し、デマンドピークが高料金時間帯に重なり、その請求が1年間続く。
- 構造体荷重の無視:器具、遮光スクリーン、配管は重量を増す。検討されていない屋根は、いずれ表面化する安全上の指摘である。
- 光子効率だけで選定し、均一性の乏しいレイアウトを受け入れるため、キャノピーの半分が目標PPFDに到達しない。
- 調光なしの設計は中間期を無駄にする。12月の暗期向けに作られた器具が、10月の日射の下で全出力運転される。
- 湿度除外条項が既に発動した設置後に保証の細則を読む。
スクリーン、CO2、熱収支との統合
スクリーンと光の相互作用
保温スクリーンは補光と双方向に作用する。光周期中にスクリーンを閉じれば、器具の出力を反射・吸収して無駄にすることがあり、夜間にはスクリーンが器具の加えた熱を保持する。点灯時間中にスクリーンを運用するなら、レイアウトとスクリーンの開閉パターンは一体で設計する必要がある。点灯下ではスクリーンを開けて小さな熱損失を受け入れる栽培者もいれば、器具光を透過するスクリーンパターンを選ぶ栽培者もいる。いずれの判断も、設置後ではなくスクリーン供給者を交えて行うべきである。
CO2と冬季の光量ウィンドウ
密閉性の高い冬季の温室では、CO2施用は補光の光子一つ一つの価値を高めるため、施用システムは補光目標と同じ月に合わせて設計すべきである。暖かい冬季の午後に換気窓が開くと施用は停止し、光の限界価値も同時に下がる。換気期間中に器具を調光するコントローラは、この変化を自動的に捉える。要点は特定の制御ロジックではなく結合関係にある。光、CO2、換気の判断は一つの計画に属する。
| 月 | 日射DLI(mol/m2/day) | 補光の必要性 | 器具の一般的出力 |
|---|---|---|---|
| 12月 | 6-9 | 目標に対する全量の差 | 100パーセント |
| 2月 | 10-14 | 大きな差 | 70-90パーセント |
| 4月 | 18-22 | 小さな差 | 20-40パーセント |
| 6月 | 26-30 | なし | 消灯 |
| 10月 | 12-16 | 中程度の差 | 50-70パーセント |
よくある質問
夏に補光は必要ですか。+
多くの場合は不要である。実測した自然DLIが既に作物の目標を満たしていれば、光の追加はエネルギーの浪費になる。調光可能なシステムは、日射が不足量を賄っている間は待機させるべきである。
自分の自然DLIはどう把握しますか。+
量子センサを数日から数週間ロギングして測定するか、地域の日射モデルを用いる。緯度、季節、被覆材、遮光によって変動するため、仮定してはならない。
温室の補光にLEDはHPSより優れますか。+
一般にLEDは高効率で発熱が少なく、熱負荷が既に課題となるガラス温室では有利である。適切な選択は経済性とスペクトル要件による。
温室の照明は調光可能であるべきですか。+
強くそう考えるべきである。自然光は一日の中でも季節でも変化する。調光は過照射ではなく、その時点の不足量に供給を合わせる。
どの目標DLIを用いるべきですか。+
作物とステージによる。普及指導資料を出発点とし、自社の試験で確認されたい。これらは計画値であり、保証値ではない。
隣の農場の設備をそのまま導入できますか。+
緯度、構造、作物が一致する場合に限る。不足量の計算は産地固有であり、異なる気候の設備を流用すると過剰または不足になりやすい。
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